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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第5回:船方気質(かたぎ)

※このコラムは、弊社代表紺野が海上自衛隊時代、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた経験の中で見聞きしたことを書いたものです。

船方気質(かたぎ)

「雨風にまぎるその夜の身のつらさ もうやめますわいの船乗りを」

と古人が歌ったように、船方稼業というものは決して楽なものではありません。

「まぎる」とは、ヨット等の帆を使って走る船が、風上に上っていく場合には、まっすぐに進めないので、左右交互に針路を変えつつ、ZIGZAGに進むことを言います。現代の護衛艦が風を利用するためにまぎることはありませんが、風浪に翻弄され、予定の針路をとれないことは数多くあります。

大型のタンカーや空母などでは別ですが、排水量1500~3000トン程度の護衛艦及び500トン程度の掃海艇(あのペルシャ湾まで行ったやつです)などでは、海が荒れるとまだまだ風浪にもてあそばれてしまいます。現代の護衛艦は、ヘリコプターを搭載しその発着艦作業時の動揺を防ぐため、艦の左右の水中にフィン・スタビライザーという飛行機の翼のようなものを持っております。

そして、少々のローリング(横揺れ)は、その翼の角度をコンピュータで制御することによって防止し、比較的安定して航行することができるのです。しかし、艦の長さを超える波長の波であれば、スタビライザーなど無用の長物、艦上ではヘリコプターも無用の長物となり、格納庫にしっかり固定され、風浪のおさまるのを神に祈るしかありません。

こんな航海が2日も続くと、どんなに慣れた船方でも、「もうやめますわいの」と呟きたくなるものです。特に、大きな揺れの中で、真夜中に当直のために起こされた時など、体はきついし「ほんに、もうやめますわいの」なのであります。

しかし、海というのは不思議なもので、台風と一緒に行動でもしない限り、どうしようもない悪天候が3日以上に渡って続くということは、ほぼ絶対に?ありません。必ず穏やかで優しい海が戻ってきます(当たり前のことですが)。

訓練が終わりホームスピード(母港へ帰投する時は、本能的に速力は速まってしまう)で航行中に、沈んでいく真っ赤な夕日と、艦とともに戯れる「いるか」の群れなどに出会うと、「艦に乗っていて本当に良かった」と、思う一瞬があるのです。この瞬間、「もうやめますわいの」はどこかへとんでいってしまうのです。

そして、母港に帰り、10日も停泊していると、また、海に出たくなり、落ち着かなくなるのが船方の悲しい習性かもしれません。

▽次号では・・・▽

皆さん、いかがでしたか?

人は大変な時、つらくて逃げ出したくなることがあります。でも、それを乗り越えた時は、他の何にも変え難い喜びと達成感を得ることができます。大変であればあるほど、達成した時の喜びは何倍にもなっていくものです。だからこそ、「もうやめますわいの」はどこかへとんでいってしまうのかもしれませんね。

次号は「階級制度」をお送りします。皆さん、是非お楽しみに・・・!

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