第7回:上陸 « 個人を本気にさせる研修ならイコア

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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第7回:上陸

※このコラムは、弊社代表紺野が海上自衛隊時代、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた経験の中で見聞きしたことを書いたものです。10年以上前に、ある団体の機関紙に数回に分けて掲載されたものを、今回いくつかの追加、修正を加えて載せているものなので、記載の時代背景等、現在のものではないことをお断りしておきます。

上陸

艦隊勤務で何といっても嬉しいのが、上陸です。海軍では、外出とは言わず、必ず「上陸」といったそうです。海上自衛隊では、陸上にある学校や航空部隊などでは「上陸」とはいわず「外出」という言葉を使っていますが、艦隊部隊では名実ともに「上陸」と言います。ちなみに、朝夕の掃除は今でも、陸上部隊であろうと航空基地であろうと、もちろん艦艇も「甲板掃除」といいます。

私の若い頃には、まだ、ねずみ上陸、油虫(ごきぶり)上陸などが残っていました。実際艦内でねずみを見つけたことはありませんでしたが、ごきぶりとはたくさんおつきあいしました。ごきぶり、といっても一般家庭で見かけるあの真っ黒なグロテスクなやつではなく、もっと小さくて、茶色の笑顔に愛嬌のあるやつです。

ねずみ一匹、またはごきぶり100匹で当直免除、上陸1日というわけです。昔の海軍では、それほどねずみやごきぶりに手を焼いていたということです。その昔、下宿のネズミをつかまえて艦にもって帰り、「よし、上陸1日を許可する」と思いきや、古参の海曹(下士官)につかまり一巻の終わり。艦内のネズミの足の裏は汚れていないので白いからすぐにわかるのだそうです。

でも、それほど船乗りは、上陸に憧れるのです。しかし、最近は、週休2日制となり、休日は増える一方です。1か月も行動して帰ると、代休はたまりにたまってきます。しかし、停泊中には、航海中にできない機器の点検、整備や日頃できない時間をかけた基礎教育など、やることはたくさんあるのです。このため、護衛艦の艦長、副長というのはいかに乗組員を休ませるかに四苦八苦しているのが実情のようです。

また、このために、隊員の募集面で海上自衛隊が苦労していることも並み大抵ではありません。今の時代、好き好んで船に乗ろうなどという若者はあまりおりません。現に艦に乗ってきた隊員でも「彼女と会う時間が取れないので困ります。艦を降ろしてください。でなけりゃ辞めさせてください。」なんて平気で言ってくる輩がおりまして、困ったものです。

「馬鹿者、女がなんだ、男には男の、海のロマンがあるだろう!!」なーんて言ったって駄目なんです。今の若者に海のロマンなんて、国中あげて楽したい世の中ですから。あまり引き留めていると、ある日突然ふっと消えてしまいます。消えたら大変、駅や繁華街に捜索隊を派出、すぐに銀行の預金口座を確認する。こういう場合、借金があるのが常でありましてサラ金に利息の停止を要請(懇願?)に行きます。「何で俺がこんなにサラ金通いせなならんのや・・・」ややオーバーですが、今の艦隊勤務の管理者とは、こんなものです。(筆者注:今から30年以上昔の昭和50年代の話です)

でも、まだまだ日本も捨てたもんじゃありません。多くの若者が、海のロマンを理解してか否かは別として、艦隊で日々訓練に励み、自己を磨いているのも、これまた偽りのない現実なのであります。ペルシャ湾でもカンボジアでも日本の若者ががんばっていたことはみなさんもご承知のとおりです。(筆者注:現在は、インド洋の海上補給やソマリア沖の海賊対処などですが)

平成2年、私が六本木の防衛庁海上幕僚幹部人事課にいたとき(筆者注:現在の防衛省は市ヶ谷にあります)、海上自衛隊として今年度の夏の休暇は連続14日間とらせること、という方針を打ち出したことがありました。隷下各部隊は大騒ぎになり、新聞各紙にも取り上げて頂き、なかなかの反響でした。

しかし部隊指揮官諸氏からは何度も「どうやって2週間もとらせろというんだ、机上の空論ばかり並べやがって」とずいぶんお叱りも頂戴しました。でも、そんなこと目じゃないんです。みんなが騒いでくれた、それだけでよかったんです。

▽次号では・・・▽

皆さん、いかがでしたか?楽しんで頂けましたか?

次号は「ごきぶり」をお送りします。なんだかすごいタイトルですね・・・。
皆さん、是非お楽しみに・・・!

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