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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第23回:命令と服従(2)

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を
復刻版としてメルマガに載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、
退職後19年を経過した現在の私が当時を思い起こして感じていることを書かせて
いただきました。これまでのものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きした
ことを、特に明確な意図というものはなく、何となしに書いてみたいと思います。
「艦隊勤務雑感」という副題も、あえてそのままとさせていただきます。
むろん、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた私のことであり、主に艦「ふね」
(以後「艦」と「船」がごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や
海上自衛隊にまつわることでお話を進めたいと思っております。

前号において、私が「みなさんは自衛隊という組織においては、誰もが命令には
忠実に従うものと思っていませんか・・・。」という問いかけをしました。覚えておら
れますか。私の経験から言えば、「自衛官であるからこそ、上司の命令には安易に
従おうとはしないもの」ということが言えると思っています。ということを書きま
したが、今回は、その理由を皆様にお聞きいただきたいと思います。

「自衛隊という組織においては、誰もが命令には忠実に従うもの」というのは、
世の中で一般的に認識されているステレオタイプであろうと思われます。自衛官とし
て組織で働いている者の中でも、人によって多少の認識の違いはあるとは思いますが、
少なくとも、3等陸・海・空曹(いわゆる下士官)以上となっている立場の者には、
共通の認識があります。

それは何かというと、彼らが受ける命令の中でも究極の命令とは、自分の生命に関
わることになるからです。それが、民間の企業で働く人々との大きな違いであろうと
思います。「自分の生命に関わることになる命令」とは、如何なるものでしょうか。

一言で言えば、「部下を連れて、そこまで行って来い」ということですが、
「危険があるのですか」と問われれば、当然のごとく「イエス」なのであります。
すなわち、自衛官として受ける最終的な、そして究極の命令は、「自らの生命をかけて
任務を果たせ」ということなのです。そのことを暗黙のうちに強く意識している自衛官
というものは、その命令を受ける相手に対して、自分の中で自分なりにでき得る限りの
選別をしようとします。自分の生命に関わる命令を、信頼できない上位者から受けたく
ないのは誰もが同じです。そうは言っても、組織としての業務は「命令と服従」という
行為を基礎に行われるため、上位者からの命令を無視するわけにはいきません。
そのため、信頼できない上位者に対しては「面従腹背」ということになります。

しかし、日常業務の運営であれば、面従腹背であってもそれなりに業務はまわっていく
でしょうが、自衛隊本来の任務である作戦の遂行や戦闘行動という中では面従腹背では
任務遂行は期待できません。そのため、自衛隊における上位者と部下の間には、おざなり
ではない本当の意味での信頼感というものが必要になると誰もが感じています。

現実問題として、それがどんな人でも、どんな場合においても成り立っているかというと、
必ずしも「全てにおいて」というわけにはいかないものと思われ、これまでの自衛隊の
歴史においても、PKOの派遣やイラクでの活動など、数少ない場面に限られてきたかも
しれません。少なくとも、自衛隊という組織においては、陸・海・空の区別を問わず、
日常の中で、上下間の信頼関係ということに非常に大きな関心を持ち、その信頼関係を
保つべく大きな努力をするという面においては、一般企業では考えられないほどの精力を
傾けていることは間違いないものと思われます。

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