第38回:時間の観念 « 個人を本気にさせる研修ならイコア

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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第38回:時間の観念

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を復刻版で
載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、15年前に書いたものではなく、
退職後22年を経過してしまいましたが、現在の私が思い起こして感じていることを書かせ
ていただき、今後のメルマガに掲載させていただこう、などという企みをしております。
前回のものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きしたこと
を、特に明確な意図というものはなく、何とはなしに書いてみたいと思います。「艦隊勤
務雑感」という副題も、あえてそのままとさせていただきます。
むろん、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた私のことであり、主に艦(「ふね」と
読んでください。以後「艦」と「船」がごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や
海上自衛隊にまつわることでお話を進めたいと思っております。

「時間を守る」ことの大切さは、社会人としては当然のことでありますが、自衛隊という
組織においては、これはことのほか重要視されています。これから3回に分けて、
「時間を守る」という時間観念についてお話したいと思います。私自身、防衛大学校
入校以来、この「時間を守る」ことについては、どの社会よりも厳しくしつけられてきた
ものと思っています。朝の起床動作から始まり、課業整列等の開始時刻、入浴、
食事など生活全般にわたって厳格に守られています。
また、「5分前の精神」なるものもこのような中で叩き込まれます。この中で特に
意識したのが、休日に外出した後、帰校すべく決められた時刻です。防大では
4学年といえども、平日の外出は特別な場合以外はできませんでした。休日に
外出して街へ出たり下宿でのんびりしたりとそれぞれに時間を過ごしますが、頭の中
から離れないのが○○時には帰らないといけない、という帰校時刻でした。
防大ではすべてが陸上自衛隊式に運営されているため、休日の夜でも「点呼」という
ものがあります。総員が中隊の廊下に並んで人数を確認して、それを週番学生が
点検をするということが行われています。もし、この点呼の際にいないようであれば
大ごとになります。一度帰校時刻を破ったら、詳しい事は忘れましたが、1カ月近くは
貴重な休日に外出させてもらえなかったのではなかったでしょうか。1カ月も外に出られ
ないというのは、18歳から22歳くらいの若者にとっては何にも増して大きな苦痛でも
ありました。
防大における帰校時刻という認識は、各自衛隊での勤務においても同じ意味を
持っています。自衛隊では「帰隊時刻」と呼ぶのが一般的ですが、この帰隊時刻とは
民間企業でいえば、就業開始時刻に対する遅れであり、いわゆる「遅刻」ということ
ですが、自衛隊においては単なる遅刻というものを超える意味合いがあり、程度の差
はあれ懲戒処分、戒告等の対象となります。護衛艦等(護衛艦、補給艦、輸送艦、
掃海艦(艇)、各種支援艦(船)などを含みます)ではこれを「帰艦時刻」と呼んで
います。特に護衛艦等においては前にもご説明したとおり、艦から出るのを「外出」では
なく文字通り「上陸」と呼び、艦に戻ることは「帰艦」と呼びます。特に乗組員は幹部と
いえども艦の乗組みということになっているので、文字通り艦に帰ることなのですが、これ
がなかなかの曲者であるのです。
通常の勤務の場合でも帰艦時刻を守ることは重要な事で、自分の班、分隊、艦から
帰艦時刻遅延者を出さない事が大切なことなのです。これを破った場合はそれなりの
処分が下されるのですが、艦船勤務者だけに課される大きな処分というものが、この
帰艦時刻というものにはあります。それは、「後発航期」と呼ばれるものであり、艦が
出港するのに遅れた場合に適用されます。陸上自衛隊、航空自衛隊においても実
際に防衛出動や治安出動、あるいは災害派遣などが下令され、いざ出動というときに
部隊に戻らなかった場合には通常の帰隊遅延とは異なる処分が科されることと思われ
ますが、陸、空においては、それはいわゆる非常事態の場合なのです。
しかし、海上自衛隊の艦艇部隊においては、日常の訓練のための出港であろうと、
一般の方々に対する体験航海などのための出港であろうと、艦が港を離れる時には
いつも起こり得ること、日常の中でも起こり得ることなので、ことさら緊張感は高いように
感じていました。私が若い頃などは、一度出港する艦に乗り遅れると、1カ月、2カ月
置いてきぼりを食うので、結果として長期欠勤のような形になってしまうため大変なこと
でもありましたが、近年は護衛艦の大半にヘリコプターが搭載されていることもあり、
出港後長い時間が経過しない限りは、ヘリで迎えにいくということもあったと記憶しております。

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