第39回:5分前の精神 « 個人を本気にさせる研修ならイコア

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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第39回:5分前の精神

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を復刻版で
載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、15年前に書いたものではなく、
退職後22年を経過してしまいましたが、現在の私が思い起こして感じていることを書かせ
ていただき、今後のメルマガに掲載させていただこう、などという企みをしております。
前回のものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きしたこと
を、特に明確な意図というものはなく、何とはなしに書いてみたいと思います。「艦隊勤
務雑感」という副題も、あえてそのままとさせていただきます。
むろん、艦隊勤務を本望として20年間生きてきた私のことであり、主に艦(「ふね」と
読んでください。以後「艦」と「船」がごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や
海上自衛隊にまつわることでお話を進めたいと思っております。

「5分前の精神」という言葉は多くの方がご存じのことと思います。時々、ご自分でも
使われることもあるのではないかと思っております。「5分前の精神」とは旧海軍の時
代から伝統的に守られてきたものであり、海上自衛隊においても、また陸、空自衛隊
においても守られてきているものと思っています。一般の企業の研修などに行なった
場合でも、人事(人財開発)担当の方の口から「5分前行動」なる言葉が発せられる
ことはよくあることでもあります。ただし、「5分前の精神」というのは単なる精神論と
いうことではなく、具体的な行動を求めていることなのです。それは、そもそも5分前に
動けということではなく、自分が何か次の行動を起こすためには、いつも5分前には次
の準備を整えていつでも取りかかれるようにしている、という行動を示すものなのです。
しかし、このような行動が身につくためには、行動パターンとして習慣化する必要がある
ため、「言うは易く行うは難し」といったところであろうと思っています。
「5分前」ということは、防衛大学校でも常に意識させられたことでもありますが、学生舎
(寮)生活の中で毎日「5分前」という号令が掛けられていると、本来の「5分前の精神」
を忘れたかのような行動となっている場合も多く見られました。例えば、朝あるいは午後
の課業整列の前に、「課業整列5分前」とマイクで流れます。そうすると、多くの学生が
マイクの号令がかかることによって、動き出すことになってしまいます。とはいえ、4年間
に渡って何をするにも「5分前」という号令とともに過ごしていくことによって、「5分前」と
いう言葉とともに、予定時刻に先んじて動くということが習性として身につくことは確かな
ことだったと思っています。
日常、弊社の中においてもこのことを痛切に感じる場面には多く出会います。
営業担当と一緒にお客様のところにおうかがいする際に、「きょうは2時に会社を出て、
2時10分麹町駅発の地下鉄に乗ります」と予告をしてくれるので私はそのつもりで
おります。私自身は2時を目安に10分前位には机の上を片付け始め、必要な資料等
を忘れないように確認をして座っております。しかし、私に予告した当人が、ばたばたと
資料を印刷したり、メールを確認したりしております。そして次に口から出るのは、
「申し訳ありません、すぐに出ますから」というものです。結果として2時10分の電車に
乗れないこともあるのですが、その時は、当人の口から「余裕を見ていますから遅れる
ことはありませんから‥‥」という言葉が出てきます。みなさまいかがでしょうか。

ちなみに、第12回(「号令」)の中で書かせていただいたとおり、今でも私が理解しか
ねるものに、護衛艦等の中で聞かれる「総員起こし5分前」という号令があります。
防大2学年時に護衛艦実習で初めて耳にして驚いたことのひとつでした。「総員起こし
5分前」の号令は現在でも続いているものと思います。なぜ朝起きることまで「5分前」
なのかについては、現在の私にも定かではありません。どなたかご存知の方があったら
教えていただきたいところなのですが、おそらく艦の生活を基礎にしている海上自衛隊
だけの号令であることから、私は次のように推察しています。私の若い頃までの海上自
衛隊では(旧海軍から続いていたのですが)、「総員起こし」と同時に「総員寝具治め」
という号令がかかっていました。海軍当時は兵隊さんの寝具はハンモックであり、それ
は戦闘時には自分たちを守る弾よけにもなるものなので、大事に扱うとともにその撤収
には時間を要したものと思われます。できるだけ早く寝具の撤収を済ませて速やかに
「総員体操」に移るために、起床前に「5分前」という予告をしたのではないかと思われ
ます。余談ではありますが、私の若い頃には、体操が終わると、「甲板掃除」という号令
がかかり、しばらくすると「別れ、休め、顔洗え、食卓番手を洗え」という号令までかか
っていたことを覚えています。顔を洗え、手を洗え、とは何と懇切丁寧、優雅な号令かと
思いましたが、これも厳しく真水の使用制限をしている艦隊勤務ならではの号令ではな
かったかと推察をしております。現在では、艦内の寝具は全てベッドとなり、真水も昔に
比べると比較的自由に使えるようになっており、このような号令が不要になってきたため、
私の若い頃に大幅に簡略化されたことを記憶しておりますが、号令そのもののそもそも
の意味や、簡略化したことの意味ということについては、誰からも教わったことがありま
せんでした。現役の海上自衛官諸氏は、現在の号令やルール、はたまたマナー的なこと
など、どのように理解し、納得しているのか、聞いてみたくなることもあるというのが昨今
の私の心境でもあります。

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