第41回:地域特性 « 個人を本気にさせる研修ならイコア

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パートナーコラム 紺野真理の「海軍におけるマネジメント」
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第41回:地域特性

※以前書かせていただいた「海軍におけるマネジメント(艦隊勤務雑感)」を
復刻版で載せてみたところ、意外にもご好評をいただいたため、以前に書いたもの
ではなく、海上自衛隊退官後22年を経過してしまいましたが、現在の私が思い
起こし感じていることを書かせていただき、今後のメルマガに掲載させていただこう、
などという企みをしました。
前回のものと同様に、私のわずかな経験の中で見聞きしたことを、特に明確な意図
というものはなく、何とはなしに書いてみたいと思います。「艦隊勤務雑感」という副題
も、あえてそのままとさせていただきます。むろん、艦隊勤務を本望として20年間
生きてきた私のことであり、主に艦(「ふね」と読んでください。以後「艦」と「船」が
ごちゃごちゃに出てまいりますのであしからず)や海上自衛隊にまつわることでお話
を進めたいと思っております。

海上自衛隊での勤務において、一番苦労したのは異動(転勤)の多いことでした。
独身時代はともかく、結婚して、更に子供ができるとそれは生活上の大きな負担と
なってきます。私は昭和55年(1980年)に結婚以来退官するまでに引越しという
ものを数多く経験しました。広島県の呉(住んだのは平清盛が切り開いたと言われる
「音頭の瀬戸」を渡った倉橋島の音戸町だったのですが)での生活に始まり、青森県
の大湊(むつ市)、そして神奈川県の横須賀、更に広島県の江田島、次に横須賀、
また、江田島、そして東京(住んだのは茨城県でしたが)と配置の変わるたびに家族
ともども引越しして歩きました。陸上自衛隊の場合は発令日の前後に異動期間という
ものが設けられているとの事で、比較的余裕を持って移動できると聞き及んでいました
が、海上自衛隊においては旧海軍からの伝統らしいのですが、「即日異動即日着任」
が大原則とされていました。
海上自衛隊には、艦艇の基地としては、主として横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊
の5つ、航空基地としては固定翼部隊の厚木、岩国、鹿屋、八戸、那覇の5つと、
航空教育部隊の基地として下総、徳島、小月、ヘリコプター部隊の基地としては、
館山、小松島、大村、舞鶴、大湊などがあります。私は、海上自衛隊の艦艇基地の
中では、横須賀、呉、大湊の三箇所しか経験していません。しかし、その三箇所に
おいてもそれぞれに地域特性があり、特に隊員の特性というものにはさまざまものが
ありました。その地域特性を頭だけでなく体で感じさせるということが異動の目的のひ
とつとも言われていましたが、実際にいろいろな地域を回ってみることによってそれを
実感することができました。横須賀では乗組員の多くが関東近県出身者であり、生活
圏として東京に近いこともあり、どこか冷静で醒めたようなところがあります。その分、
自分の役割はきちんと果たし、打てば響くような抜けのない確実な仕事をしますが、
それ以上でも以下でもないといったところがあります。呉は中国地方や関西出身者が
多いこともあり、どこかのんびりとして天真爛漫なところがありました。自分の仕事は
責任を持ってこなしますが、それ以上に自分のことや遊びのことにも熱心であり、艦内
が暗くなるなどということもあまりありません。ところが、大湊(青森県むつ市)に行くと
これが大きく異なっていました。私は内示を受けることもなしに発令電報を見せられ、
というか、上司も私の異動を知らなかったようなのですが、突然呉の護衛艦「なつぐも」
から大湊の第32護衛隊勤務(通称「隊付」と呼ばれています)への異動を命じられました。
行ってみると、北国の隊員は横須賀や呉の隊員とは異なり、明るさやスピード感、打てば
響くといったものはあまり感じられないのですが、困難なことにも粘り強く取り組んで簡単
に諦めないのです。これには大変に驚きました。私は豪雪の大湊で二冬を過ごしましたが、
短い夏が終われば秋はあっという間で寒い冬となります。このような特性は、冬場に毎日
雪かきと雪下ろしに追われる日常から生まれるものではないかとつくづく思いました。
とはいえ、三者三様、三つの地域を経験してみて私の感じたことは、「住めば都」「一緒
に仕事をすれば、みんな良い人達」ということでした。そんなことを実感できただけで、
その後続いた引越しの苦労も何とか報われるものであったような気がしたものでした。
このところ日本列島は各地で豪雪に見舞われているようですが、北国、青森(大湊)で私
の得た貴重な体験をひとつ。3月になると、それまでの降り積もった根雪が少しずつその
量を減らし、雪の合間に黒い土が少しだけ見え始めます。3月も半ばになり土が見えると、
もう2、3日でそこに緑の小さな芽が出てくるのです。横須賀や呉では得られることのない
「ああ、やっと春が来たなー」ということを実感する瞬間なんですね。こんな体験ができた
だけでも、異動(転勤)をした意味があったような気がしている今日この頃でもあります。

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